シンバルの音作りで一番簡単なのは、楽器そのものを変えることです。今回は、以下の4種類のハイハットについて、上下のペアを変え、計16種類のサウンドを比較してみます。
- A Zildjian NEWBEAT(2024年製)
- K Custom Special Dry(2017年製)
- K Constantinople(1999年製)
- K Kerope(2021年製)
スペック面からの推測
ウエイト
各シンバルのウエイトは以下の通りです。NEWBEATやSpecialDryはTopとBottomのウエイト差が大きく設定されており、ボトムが比較的厚いことが分かります。一方でConstantinopleやKeropeはTopとBottomのウエイト差が狭く設定されていることが分かります。
- A Zildjian NEWBEAT
- Top: 935g
- Bottom: 1403g
- K Custom Special Dry
- Top: 945g
- Bottom: 1333g
- K Constantinople
- Top: 954g
- Bottom: 1164g
- K Kerope
- Top: 946g
- Bottom: 1085g
なお、このConstantinopleのTopは現行のものよりウエイトがあり、現行のConstantinopleのウエイトはおおよそ以下の通りです(本HPから引用)。
- Constantinople Hat Top : 867 ~ 906 g ( Avg. 888 g )
- Constantinople Hat Bottom : 1078 ~ 1122g ( Avg. 1112g )
プロファイル
カップの形状については、Topのカップとボウとの境から頂点までの高さを比較すると、高い順にNEWBEAT、Constantinople、SpecialDry、Keropeとなります。また、カップとボウのつながり方も、NEWBEAT、Constantinople、SpecialDry、Keropeの順になだらかになっています。加えて、ボウの形状についても、NEWBEAT、Constantinople、SpecialDry、Keropeの順で平らになっていっています。
ハンマリング・レイジング
NEWBEATはAジルジャンに代表的なロータリーハンマリングと、全体に均一なレイジングが施されています。表面も裏面も全面削られている、ある種最もスタンダードな仕様です。
このConstantinopleのハイハットは現行と仕様が異なり全体に深めのハンマリングが施され、現行にあるピンレイジング(間隔をあけた細い幅、深めのレイジング)がありません。
https://zildjian.jp/cymbals/k-family/k-constantinople/14-k-constantinople-hihat.html
SpecialDryはConstantinopleに見られるような大きく深いハンマリングがまばらにされており、表面はピンレイジングのみ、裏面は全面に幅広め深めなレイジングが施されています。
Keropeはハンマリング工程の中にハンドハンマリングを取り入れており、ひとの手による細かいハンマリングが見て取れます。全面のレイジングが施された後、「パティーナ」と呼ばれる、酸化処理と思われる表面処理が行われたのちにピンレイジングが施されています。ものによって具合が異なりますが、この個体は表面処理をシンバルクリーナーである程度剥がしてあります。
サウンドの比較
これらの前提をもって、計16種類のサウンドを聴いてみてください。主なハイハットのサウンドは、ドラマーの頭上に配置した2本のスモールダイアフラムコンデンサーマイクで収録されています。
上下のハイハットのサウンドが近づくほど、タムの両ヘッドを同じピッチにしたような、シンプルなサウンドに向かい、上下のハイハットのサウンドが離れるほど、タムの両ヘッドでピッチ差をつけたような、和音のような複雑さのあるサウンドに向かうことが分かります。特にハーフオープンやオープンで演奏したときのサウンドは、鳴っている時間が長いこともあり、音色の差がはっきりと出ています。
個人的には、まずハイハットに求める音量のレンジからBottomのシンバルをウエイトで絞り、続いてクローズに求める音の長さからTopのシンバルをウエイトで絞っていくのが好みです。